ライアーゲーム6巻

稀代の天才詐欺師と呼ばれる知略の持ち主、秋山と、脅威の支配力と頭脳を誇る強敵、ヨコヤとの勝負に決着がつく。


直&秋山のチームが、ヨコヤのチームに勝利するが、ヨコヤ個人は勝ち逃げという状態になる。
その状況をもってヨコヤは、秋山のもくろみは破綻した、お前たちの行動は矛盾していると嘲笑う。
論理的にはヨコヤの指摘どおりなので、チームとしてはヨコヤに勝ったものの、秋山は返す言葉もなく沈黙する。


ここで黙っていなかったのが直。
戦力としては全く役に立っていない直だが、このライアーゲームという、しくまれた企画全体を通して自分たちはどうあるべきかという信念を、最も強く貫き通したのは直だったから。


ヨコヤはこのゲームの本質は「支配力」だと言い切り、支配力によってこのライアーゲームを勝ち進んできた。だが、直&秋山チームとの対戦で、ヨコヤの支配に従順に従った者は損をし、ヨコヤの支配を裏切って直についたものは救われた。


一方の直の主張は、「自分だけは助かろう、自分だけは儲かろう。そんな気持ちをみんなが捨てることが出来たら、全員が助かる」というもの。
そして直はその考えを貫き通し(具体的な作戦立案と実行は秋山の手によるものだが)、チームとして勝利することが出来た。


だから直はヨコヤに対してこう言う。

「ヨコヤさんはお金儲けに勝っただけで、私との勝負には負けたのです!!」

「主張を貫いた私達の勝利。自分だけ儲けよう・・・そんな小さいことにこだわって、『支配力こそ全て』その主張を捨てたあなたの敗北です」


技術的にはある意味、秋山を上回ったヨコヤであるが、直の言葉に手痛い屈辱を味わう。


勝負に勝つには技術が必要で、勝たないことには何も始まらないが、技術だけあっても信念がなければ、勝利から得られるものは少ない。


バカ正直で、およそライアーゲームという騙し合いの勝負には全く向かない直であるが、その愚直なまでの信念が、殺伐とした騙し合いのなかで人を信じられなくなっているプレイヤー達を、少しずつ変えていく。





実際、目的も信念もない技術というのは虚しいもので、今ハマっているつまらん仕事が、案件の内容の割りに進行が実に困難になってしまっている原因の一つは、自分だけが楽しようとして設計の方針をイジくり倒している技術オタクのプレイヤーが居るから。


イジくればイジくるほど、プロジェクトの進捗は滞り、最終的にはそのプレイヤーの首も絞まるのだが、そういう局面に至ったとしても、彼はヨコヤのように、自分に従ったメンバーに損させてでも自分一人だけ勝ち逃げするように謀るであろうことは、今の段階から見え透いている。


実にくだらないヤツだが、プログラマー視点の技術で見ると優れているので、プログラマーレベルのメンバーから見ると、彼は神の如く見えてしまう。
故に今の現場は、彼が支配するオモチャ箱と化している。


目的意識としては、全く話にならない彼だが、その彼をブッコロスだけの技が自分に無いというのは実に屈辱的なこと。
かと言って、キャリア10年目あたりのエンジニアである自分が、いまさらプログラマーとしての技術向上に注力していたのでは、キャリア形成として全く間違った方針を取ることになってしまう。


そういう局面であるだけに、直がヨコヤ対して言ってみせた言葉が響く。